中国歴史ドラマ「鬼谷子-聖なる謀-」あらすじと感想 第31話

第31話 偽りの別離


姮娥は魏王から賢夫人に封じられてしまった。

姮娥を手放したくない王禅は、芝居をやめることにすると、姮娥に訴えかける。

「お前を犠牲にはしない。

楚へは行かず、大王様も裏切る」

だが姮娥にも覚悟があった。

「これからは運命に従う。

あなたとは一緒に生きてはいけないの。

共に生きたいと言ったけど、そんな時ではなくなった」


「一緒に逃げよう」

王禅はそう言って姮娥の手を取る。

姮娥は踏みとどまり、離して、と王禅に言う。

無理やり引っ張って行こうとする王禅を諦めさせようと、姮娥は左手でそばにあった剣をつかむ。

その剣で、自分の右手首を斬り落としてしまう。


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すがりつく王禅に、姮娥が言う。

「私たちの芝居では説得力がない。

こうしてこそ、天下の誰もが、

あなたの怒りと裏切りを、疑うことなく信じるわ。

これで楚に行っても、あなたは安全になる。

こうしてこそ、私は解放される。

行って・・・。

この手を斬った意味がない」

なおも剣をつかみかける姮娥を見て、王禅は建物から逃げ出す。

姮娥は「大王様」と叫んで助けを求める。


 ※

王禅は魏を出て行く準備をして、待ち受けていた今淑公主に会う。

そして何も言わず、いきなり今淑に殴り掛かる。

次いで剣を抜き、今淑の首に突きつける。

「早く殺しておくべきだった」

どうして、と訊く今淑に、姮娥が右手を斬ったことを教える。


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今淑は小さく笑って言う。

「手を斬ったのも、あなたを悲しませたのも姮娥。

なのに私に罰を?

私はあなたの痛みのはけ口にされ、

それでも共に歩もうと、ここにいる。

姮娥は手を失った。

でも私たちは、命を失うかも」


王禅が何も返さないと、今淑は、楚の太子には話を通してあることを告げる。

計画は予定通りに進んでいる、と言って、馬車に乗るよう、指示する。

王禅は馬車に乗らずに歩き始める。


 ※

姮娥はしばらく気絶していたが、ようやく気付く。

王禅は計画通り、楚に向かったと聞き、安心する。

だが今淑が一緒だと知ると、やはり気落ちしてしまう。


魏王は王禅を追撃する兵士に、王禅殺害を命じる。

そこまでしないと、芝居が真に迫らない、と言うのだ。


 ※

休憩中、今淑は王禅に夜食を作ってやる。

だが王禅はそれを食べようともせず、払いのけてしまう。

今淑は怒りながらも、諦めて火のそばに座る。

姮娥には同情するけど、それで、これからの私の犠牲にも意味が生じる、と今淑は言う。

すると、草むらから蛇が出てくるのを見つける。

今淑は身動きできない。

蛇はいきなり今淑の足首に噛みついた。


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苦しそうにする今淑を見て、どうした、と王禅が声をかける。

噛まれた、と言う今淑に、どこを、と王禅は訊く。

「やっぱり私を放っておけないのね」

今淑が言うと、王禅は、騙されたと思ってそばを離れていく。

「王禅、あなただけはだまさな・・・」

言いかけて今淑は気を失う。

驚いた王禅は、今淑の足首の傷痕を見つける。


馬丁に声をかけるが、その瞬間、馬丁も蛇に噛まれ気を失う。

馬車馬は動顛して、馬車を引いたまま逃げ出していく。

王禅は今淑の足首に口を当て、毒を吸い出してやる。

そのまま抱きかかえて、蛇の巣窟から逃げようと、歩き出していく。


しばらくの後、追撃の兵士がそこを通りかかるが、馬車の後を追って走っていく。


 ※

王禅は村の医者を見つけ、今淑の治療を頼む。

噛み痕から、猛毒の錦玉蛇だと分かる。

手持ちの薬草しかなく、一時ごとに塗り直さねばならないのだという。

王禅は手厚く世話をしてやる。


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朝になって今淑は目覚める。

だが様子がおかしい。

「楚にはついた?

今の時分は?

真っ暗よ、明かりをつけて。

王禅、どこにいるの?

明かりを灯して」


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分かった、明かりを点けてくる、と王禅はごまかして、村医者に訊く。

「なぜ目が見えない?」

猛毒の蛇に噛まれて、生き延びただけでも幸運だ、と医者は言い、目を治すにはひとつだけ方法がある、と明かす。

「うまくいくか自信はない」

「望みがあるなら試す」王禅はそう言って手だてを聞く。


医者は「断腸草」を差し出す。

毒ではあるが薬にもなる、と医者は言うのだ。

5人に試したところ、1人は治り、1人は効果がなく、残り3人は死んでしまったという。

適量がわからないそうだ。

「少量から様子を見て増やす。

だが服用すれば激痛を伴う」

王禅は、やってみよう、と決める。


 ※

魏王のもとに、姉である周の王后から手紙が届く。

周の天子が、奴隷制を廃すると決めた魏王に不信を抱いているから、爪を隠して和を示しなさいというのだ。

決して諸国の標的にならぬよう、と気を揉んでいる。


魏王はまた、鍾僷(しょう・よう)という遊侠人に、呉起将軍暗殺の特命を与える。

王禅が失敗した時には、そなたが果たせ、と言うのだ。


 ※

王禅は今淑に薬を飲むよう指示する。

今淑にも、それが毒薬だと分かっている。

「殺したいなら、なぜ救ったの?」

「他に方法はない」

「死んでもいいと?」

「治った者もいる」

「たった一人ね。

命を懸ける気があるか、尋ねもしないの?」


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「興味はない。

俺と同行するなら、その命も計画の一部だ。

番狂わせは許さん」

「冷酷になったものね」

「飲め」

「私にだけ冷たいの?

私が死ねば、あなたの計画はどうなる?」

「足手まといが消え、すぐにも楚の都に到着できる」


「王禅、ひと言でいい。

唯一の道なんだと言って。

この治療法で、大勢の人が治ったと」

「だましたくない」

「こうでもいいわ。

失命した私を見て、

胸が痛むし、つらいんだと。

もしくは、私の目を治すためだったら、

一縷の望みでも、試したいんだと」


「心にもないことは言えない」

「慰めも言えない?」

「本音を聞くか」王禅は言い、今淑の耳に顔を寄せる。

「魏を離れた時から、死ねばいいと思っていた。

生かしておいたのは利用できるからだ。

目が治れば、まだ利用価値はある。

目が治らず命を落とせば、

俺が一番、望む結末だ」


薬の入ったお椀を今淑に渡す。

「自分で決めろ。

死人でも盲人でも、俺には同じだ」

そう言って出て行く。

今淑は器の薬を飲み干す。

小屋の外にいた王禅は今淑の苦しむ声を聞く。



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朝議で魏王は宣言する。

「余は王禅を誤信し、

宰相に任じ、変法を容認、

貴族たちの恨みを買った。

王禅の変法によって、

余は国内で、貴族たちの忠誠を失ってしまった。

奴隷制の撤廃で、国の根本が揺らいだ。

国外からは、魏を敵視し、

兵力削減を求める声が高い。

わが魏の脅威を軽減したいのだ」


嘯公は、兵力削減は悪い話ではない、と意見する。

その分、徴税をおさえられ、国や民にも喜ばしいというのだ。

では、呉起の楚軍が侵攻してきたら、いかに対抗するのだ、と魏王は反論する。

嘯公は、それは、と絶句する。

しかも王禅のせいで多くのものを失った、と魏王は言う。

「諸国の信頼や貴族の忠誠、国の財はおろか、

愛する女の手までな。

すべて王禅のしわざだ」


魏王は嘯公を目の前に呼ぶ。

「今日から、兵20万を減らせ。

この妥協は、すべて王禅が元凶だ。

本日より、全臣民に対し、

王禅の誅殺を許す」


 ※

そのころ、楚の使者が駅館に到着している。

使者は魏王が王禅に対して追撃兵を派遣したことを聞く。

だが、にわかには信用できん、魏王の腹の底は読めぬ、と信じないのだ。


 ※

今淑はようやく激痛から解放される。

やって来た王禅は冷たく言う。

「あの量では死なん」

「出て行って」今淑は怒って追い出す。



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姫元伯は周の天子から魏の様子を知らされる。

「魏暋が姮娥を後宮に召して妃とし、

王禅は怒りで姮娥の手を斬り逃亡した。

魏にとっては、天を揺るがす一大事だ。

そちなら分かるな?

王禅は魏の宰相で、兵の配備も熟知する。

そんな男は、どの国に逃げても、

天下の局面を、大きく左右するだろう。

そちは王禅とは気心の知れた間柄、

しかし、これほどの大事に、情は挟めぬぞ。

早急に打つ手を整えよ」


元伯はしばらく黙ってから、言う。

「王禅は今淑と3日前に逃亡、

魏王は6方向に追手を放ちました。

2日前の情報から判断するに、

彼らは楚に向かったはず」


なぜ楚に、と天子は悩む。

元伯は言う。

「魏暋は王禅と反目し、追手を放った。

自然な成り行きですが、

時に自然すぎるからこそ、疑わしく感じる。

本当に王禅は魏を裏切ったのか。

私が信じるのは、己が見たものと、

そこから導いた結論のみ」


 ※

姮娥もようやく回復した。

歩き回れるほどの元気も出てきた。

姮娥は寝室を出て部屋の中を見て回る。

なくなった右手の先は包帯にくるまれている。